札幌高等裁判所 昭和60年(行コ)1号 判決 1985年10月28日
控訴人(第一審原告)
横川勝己
被控訴人(第一審被告)
絞別郡湧別町長
羽田宏
右訴訟代理人
山根喬
伊藤隆道
主文
原判決を取消す。
控訴人の訴を却下する。
訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人(本案の申立)
1 原判決を取消す。
2 被控訴人が控訴人に対し昭和五八年四月一日付で企画課統計係長を免じ総務課付を命ずる旨の発令をした処分はこれを取消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 本案前の申立
主文同旨
2 本案の申立に対する答弁
(一) 本件控訴を棄却する。
(二) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
一 被控訴人の本案前の主張
1 控訴人は原審口頭弁論終結後の昭和六〇年三月三一日、昭和五六年法律第九二号附則三条の規定により湧別町職員を停年退職し、既にその身分を喪失している。
2 そして、仮に本件処分が取消されたとしても、本件処分時に遡つて給与、各種手当、退職金などに関する請求権が控訴人に回復されることもない。
3 したがつて、控訴人には本件処分の取消を求める法律上の利益がないから、控訴人の本訴請求は不適法である。
二 本案前の主張に対する控訴人の認否
被控訴人の本案前の主張1及び2の各事実は認める。
第三 証拠<省略>
理由
一本案前の申立について
1 控訴人が昭和六〇年三月三一日に湧別町職員を停年退職し、現在その職員たる身分を有していないこと及び本件処分が仮に取消されたとしても、本件処分時に遡り控訴人に回復される給与、各種手当、退職金などに関する請求権は存在しないこと、以上の各事実は当事者間に争いがない。
2 そうすると、控訴人には本件処分の取消を求める訴の利益がないものというべきであるから、控訴人の本訴請求は不適法として却下を免れない。
二よつて、控訴人の本訴請求は、本案について判断するまでもなく不適法として却下すべきであるから、これを棄却した原判決を取消して本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官舟本信光 裁判官長濱忠次 裁判官井上繁規)